新人の頃は、「営業に行ってこい!」と上司に言われても、正直どのようなことを話せば良いかわかりませんでした。また、営業を長年やっていても、営業の勘どころが分かっていないと、やはり売れません。
私自身もそうでしたが、営業という行為を論理立てて、言語化して教えてくれる先輩はいませんでした。ある意味、営業はブラックボックス化しており、なかなか営業マン同士で教え合うなんてことをした記憶がありません。
どちらかというと、先輩に同行営業させてもらい、見て聞いて技を盗むものだ!と思っていたような気がします。もちろん、それも大事なのですが、会社としてはやはり優秀な営業マンがいっぱいいてくれた方が、売上もアップするのでありがたいはずです。
今回は、そんな営業アプローチにまつわる話をしていきます。
これは実際に私が20代中盤の時に、パッケージ旅行商品の企画会社で働いていた頃の話です。
旅行商品の企画会社は、飛行機+ホテル+現地空港〜ホテル送迎セットのパッケージ商品を作り、旅行代理店へパンフレットを置かせてもらい、お客さんからの成約ベースで、代理店へ販売手数料を支払うビジネスモデルとなります。
当時、旅行代理店へのルートセールスを担当しており、とある代理店のカウンター担当から言われた一言から気づきとなったことであり、特にB to Bビジネスでは大事にしているアプローチの仕方をご紹介します。
お客さん(旅行者)をどのように案内すれば良いか
ある日、いつものようにA社(旅行代理店)に立ち寄った時のことです。
その時のA社は、これまでの取引実績はないものの、気軽に話ができる雰囲気が漂っていました。
いつも通り、「新しいパンフレットができたので、置いてください。」と言い残し、そそくさと立ち去ろうとした時、カウンター窓口の女性からの一言がきっかけでした。
彼女は「今度タイに行きたいというお客さんがいるから、どのようなホテルが良いか、どのような過ごし方を案内すれば良いのか教えてよ!」と言いました。
その当時の私は、商品(この場合はパンフレット)さえあれば、そしてその商品が良ければ自然と売れると思っていました。私の役目は、その商品を確実にいろんな得意先に配りまくることだと思っていたのです。
営業をしている皆さんには当たり前だと叱られるかもしれませんが、私はそのことに気づいていませんでした。むしろ、旅行代理店の窓口をやっている彼らは、企画している我が社よりも旅行に関する情報に詳しいと思っていました。
彼女の声がきっかけで、自分の役割が明確になりました。
お客さん(旅行代理店)が欲していること
そして、その翌週、A社のカウンター窓口の従業員約10名に向けて、営業開始前の時間を借りて、プチ勉強会を開くことになりました。
その時の私は、どのように勉強会を進めれば良いのかさえわからないほど、未熟でした。ただ、パンフレットを片手に向かうことを決意しました。
徐々に従業員が集まり始め、パンフレットに掲載されていないホテルの特徴や詳細をトークしながら説明すると、従業員の皆さんが必死にメモを取っている姿が印象的でした。
その光景を目にすることがなかったら、私の人生は大きく変わっていたかもしれないと感じるほどの衝撃でした。
お客さん(A社)は、商品だけでなく、その付随する付加価値(パンフレットには書かれていない役立つ情報やポイント)を求めていたのです。A社にとって、旅行者が望む回答を提供できるかどうかが重要でした。
このプチ勉強会のおかげで、2週間も立たずにA社と初めての契約を獲得することができました。
初めて、自分の知識が役立った瞬間であり、自分の力でビジネスを成し遂げたと感じた瞬間でした。
営業の根本的な考え方は万国共通
世の中では、「付加価値を売れ」というフレーズをよく耳にします。
ここでの「付加価値」とは、自分だから提供できる情報や、相手にとって有益なセールストークの要素を指します。
商品そのものも重要ですが(もちろん、魅力のない商品は難しいでしょう)、B to Bビジネスでは商品を使って
得意先を勝たせる方法を提供することが大切です。
そして、その情報提供が得意先の満足度向上につながれば、提供した企業も評価され、今後のビジネスに還元されるでしょう。
これは、国内外のさまざまなお客様との経験から得た考え方であり、普遍的なものです。
まとめ
このエピソードは、営業における重要な考え方を示しています。商品の魅力だけでなく、付加価値の提供が成功への鍵であることが明確に示されました。
営業活動を行う際には、お客様のニーズを理解し、そのニーズに合った情報やアドバイスを提供することが不可欠です。商品そのものの魅力だけでなく、その商品を活用することで顧客がより良い結果を得られる方法を提案することが重要です。
このエピソードは、営業だけでなくビジネス全般に通じる普遍的な考え方です。顧客満足度を向上させることは、ビジネスの成功に直結します。皆さんも、付加価値の提供に注力し、顧客との信頼関係を築いていくことを忘れないようにしましょう。