vol.62 海外ビジネスはじめの一歩は目標設定

海外ビジネスを始める時、目標値の設定とその目標値の根拠を説明できますか?私がこれまでにコンサルの現場で携わってきた企業さんの中でも、これが明確ではない企業さんは多いです。でも心配は無用です。これは問題ではないのですが、知っておいた方が良いと思いますので、今回シェアさせて頂きます。

もしこれまでに目標値を設定している企業さんがいらっしゃるのであれば、例えば前年比の10%アップにしようとか、周りの企業が〇〇ぐらいだから我が社も〇〇ぐらいにしようとか、そのような決め方になっておりませんか?
もちろん、これでもダメなわけではございません。

今回の記事では、目標値設定の考え方を共有します。なぜそんなに目標値が必要なのかと申しますと、社員全員で目指すべき方向や、活動そのものが全く目標値によって変わってきてしまうためです。例えば、目標が3年後に1億円の売上と1千万円の売上では、何となくやる行動と範囲が違う感じがしませんか?

そうなんです。活動そのものが目標によって全く異なってくるため、目標値というものがとても大事なんです。
今回の記事は①万が一の備え、②新規プロジェクト、③投資回収期間という切り口で、目標の立て方を考えて行きましょう。納得感があれば是非とも御社でも取り入れてください。

万が一の備え

2020年新型コロナウイルスが流行した際、このままいけばうちの会社はどうなってしまうんだろうと、危機感を感じられた方は多いのではないでしょうか?これは雇われ側では問題意識は薄く、何かあれば転職すればいいだろうと感じる方も多いでしょうが、雇い主側ではそうも行きません。

よく日本では特に大手企業では内部留保が多いだったり、従業員に還元してくれないとか、数年前まではよく耳にしたものです。大手企業であれば体力があるため、多少の出来事でも耐えうる体力はあるでしょう。しかし、中小企業にとってはコロナの流行などは死活問題なんです。

中小企業にとっては、『万が一への備え』という考え方が必要です。特に売上高が全く立たなくなっても毎月発生し続ける費用、そう固定費分(例えば、人件費や家賃、水道光熱費など)を雇用者は支払い続ける必要があります。そのため、中小企業にとっては1ヶ月分の固定費x月数を現預金としてストックしておけるような環境が必要になるわけです。

例えば、6ヶ月分ほどあれば、たとえ売上が6ヶ月途絶えても固定費分は支払い続けることができますので、その間の期間で売上体制を強化したりして、立て直しを図りやすくなるのです。

新規プロジェクト

企業の持続的な発展に向けては、新商品の開発や商品ラインナップの拡充など、開発費や設備投資、人材の確保によって、多額な資金を要することがあります。企業の宿命なのですが、一生現状維持を保った状態で発展していく企業など皆無です。

そのため、新規プロジェクトに向けて利益剰余金を確保することは、企業の持続可能な成長を支える重要な戦略です。利益剰余金とは、企業が得た利益の一部を将来の投資や緊急時の資金として蓄えるものです。これにより、企業は予期せぬ経済的な変動や不測の事態に対しても柔軟に対応することができます。

また、新しいプロジェクトの開始には、多額の初期投資が必要となることが多く、自己資金を用いることで、借入による負債の増加を抑え、財務健全性を維持することができます。さらに、利益剰余金が豊富にあることで、革新的なプロジェクトへの挑戦や市場機会の迅速な捉え方が可能となり、競争力の強化にも繋がります。このように、利益剰余金の確保は、企業の安定と成長を両立させるために不可欠です。

投資回収期間

特に海外に拠点を出す場合など、目標額の中には投資回収期間という要素が含まれてきます。ご想像に容易いかと思いますが、海外に拠点を出すことにより発生する費用は多岐にわたります。まず、現地でのオフィスや工場の設立費用があります。これには不動産の購入や賃貸、内装工事、設備の設置などが含まれます。次に、人件費として、現地スタッフの採用・訓練費用や、駐在員の給与・福利厚生があります。

また、現地の法律や規制に従うための法務・会計サービスの費用も必要です。さらに、文化や言語の違いに対応するためのマーケティングやローカライゼーション費用も発生します。物流や輸送コストも無視できません。現地の市場調査やビジネスパートナーとのネットワーキング活動も重要で、これらにも相応の費用がかかります。さらに、現地の経済状況や為替リスクを管理するためのリスクマネジメント費用も必要です。

これらの必要費用を未来のリターンを見込む投資と捉え、投資回収期間達成後の収益をシミュレーションしてください。場合によっては、その回収期間ではやる前からすでに破綻している可能性もあります。目標を立てるときには必ず投資回収期間を意識し、損益分岐点後の利益計画が目標値と合致する計画となるのかを見極めましょう。

まとめ

いかがでしたか。今回は「目標の立て方」を見てまいりました。
ひょっとすると、国内ビジネスが先細りだから、海外展開を考えていたという企業さんもいらっしゃるかもしれません。その時に立ち止まって、海外ビジネスでどれだけ稼ぎたいのかを目標額で考えてみてください。

その目標額の根拠を考えると、時間もお金も労力もかかる海外ビジネスの参入ではなく、国内ビジネスで工夫すれば達成する可能性もあるのです。その場合は海外ビジネスのタイミングではないのかもしれません。参入保留や一時中断の決断も御社の状況によっては必要となります。

私自身、やみくもに企業様の海外ビジネス参入を勧めることはしませんし、必ずこの目標値と目標の根拠となる部分をヒアリングし、必ず一緒に考えます。そしてそれが本当に海外ビジネスに参入する意義があるのであれば、そこから目標値に沿ってその戦略を練って行きます。

もし御社で迷うことがあれば、お気軽にご相談ください。



この記事を書いた人

金子 浩二

金子 浩二

海外販路開拓・業務改善コンサルタント
事業推進するための人材やノウハウ・スキルにお困りではございませんか?
15年間の海外ビジネス経験のなかで、海外駐在を2度経験。最前線で営業マンとして活躍し海外市場を切り拓いた結果、計100社以上の海外企業へ販売を実現。
また計4社で11箇所の部署を経験、業務効率化に尽力。異動引継が多い環境であったため、如何に組織のなかで人材を機能させるかに着目した結果、仕組み化の重要性に気づく。
これらの経験から2023年3月に独立し、GC COMMUNICASTIONSを開業。現在、企業様への海外販路開拓および業務改善という2つの切り口からコンサルティング支援中。

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