vol.80 東南アジアのEV車事情

近年、電気自動車(EV)は世界的な注目を集めており、東南アジアもその例外ではありません。人口の増加と経済成長に伴い、環境問題が深刻化する中で、EVは持続可能な交通手段として期待されています。本記事では、東南アジアにおけるEVの現状、普及の課題、政府の取り組み、そして将来の展望について詳しく解説します。

ここでいうEV車とは、BEV(Battery Electric Vehicle(バッテリー電気自動車)BEVは内燃機関を持たず、リチウムイオン電池などのバッテリーを動力源として使用)、PHV(Plug-in Hybrid Vehicle(プラグインハイブリッド車)電気モーターと内燃機関の両方を搭載しており、電力とガソリンまたはディーゼルの両方で駆動)を指します。

東南アジアにおけるEVの現状

東南アジアは多様な国々から成り立っており、各国のEV事情も異なります。シンガポールやタイ、マレーシアなどの国々では、EVの導入が進んでおり、充電インフラの整備も進展しています。特にシンガポールは、政府主導でEVの普及を推進しており、2030年までに内燃機関車の販売を禁止する計画を発表しています。

一方で、インドネシアやフィリピン、ベトナムなどでは、EVの普及はまだ初期段階にあります。これらの国々では、インフラの整備や価格の高いEVに対する消費者の関心が課題となっています。しかし、政府や企業が積極的に投資を行い、EV市場の成長を促進しています。

特に私の住んでいたタイでは、2020年頃まではEV車はあまり耳にすることはありませんでした。その頃は中国メーカーのMGがタイ市場において意欲的に活動している印象でしたが、2023年では新車登録台数の約10%がEV車となっております。しかも市場を牽引しているのはTeslaではなく、中国メーカーであるBYDやMGを中心であり、日本車の牙城であったタイ市場においても自動車業界の勢力図も徐々に変化しております。

EV普及の課題

東南アジアにおけるEVの普及にはいくつかの課題があります。まず、インフラの未整備が大きな障壁です。充電ステーションの数が限られているため、長距離移動が困難であり、消費者の不安を招いています。また、電力供給の安定性も問題となっています。多くの国では電力供給が不安定であり、EVの充電に必要な電力の確保が難しい状況です。

次に、価格の問題があります。多くの東南アジアの国々では、EVの価格が内燃機関車に比べて高く、一般消費者には手が届きにくいです。これに加え、バッテリーの寿命や交換費用も考慮すると、初期投資が高額になることが普及の妨げとなっています。

さらに、消費者の認知度と信頼性の問題もあります。EVに対する理解や関心がまだ十分でなく、内燃機関車に比べて信頼性が低いと感じる消費者も多いです。これらの問題を解決するためには、政府や企業が一体となって啓発活動を行う必要があります。

政府の取り組み

東南アジア各国の政府は、EVの普及を促進するためにさまざまな政策を打ち出しています。例えば、タイではEV製造に対する税制優遇措置を導入し、国内外の企業がEV製造を行いやすい環境を整えています。タイ政府は、2030年までに国内で販売される車両の30%をEVにする目標を掲げています。

インドネシアでは、国内の豊富なニッケル資源を活用し、EVバッテリーの生産拠点としての地位を確立しようとしています。また、政府はEV購入に対する補助金を提供し、消費者の負担を軽減しています。マレーシアも同様に、税制優遇や補助金を通じてEVの普及を支援しています。

将来の展望

東南アジアにおけるEV市場は、今後数年間で急速に成長すると予想されています。技術の進歩により、EVの価格が下がり、バッテリーの性能が向上することで、消費者の関心が高まるでしょう。また、充電インフラの整備が進むことで、EVの利用が一層便利になります。

さらに、東南アジアの都市部では交通渋滞や大気汚染が深刻化しており、これに対する解決策としてEVが注目されています。政府や企業の取り組みが功を奏し、環境に優しい交通手段としてEVが普及することで、持続可能な都市づくりが進むでしょう。

まとめ

東南アジアのEV事情は、多様な国々がそれぞれの課題と向き合いながら、持続可能な交通手段の普及を目指して取り組んでいます。政府の政策支援や技術の進歩により、今後EVの普及が加速することが期待されますし、この流れは今後も加速していくことでしょう。東南アジアの未来に向けて、EVはますます重要な役割を果たすことでしょう。

この記事を書いた人

金子 浩二

金子 浩二

海外販路開拓・業務改善コンサルタント
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15年間の海外ビジネス経験のなかで、海外駐在を2度経験。最前線で営業マンとして活躍し海外市場を切り拓いた結果、計100社以上の海外企業へ販売を実現。
また計4社で11箇所の部署を経験、業務効率化に尽力。異動引継が多い環境であったため、如何に組織のなかで人材を機能させるかに着目した結果、仕組み化の重要性に気づく。
これらの経験から2023年3月に独立し、GC COMMUNICASTIONSを開業。現在、企業様への海外販路開拓および業務改善という2つの切り口からコンサルティング支援中。

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