vol.83 東南アジアの自動車業界

東南アジアは急速に成長する経済地域であり、自動車業界もその成長を反映しています。人口増加、都市化の進展、所得水準の向上に伴い、自動車の需要は年々高まっています。ここでは、東南アジアの主要な自動車市場、トレンド、課題について詳しく見ていきます。

1. タイ:東南アジアの自動車製造ハブ

タイは「東南アジアのデトロイト」と呼ばれるほど、自動車製造が盛んな国です。トヨタ、ホンダ、日産などの大手自動車メーカーが生産拠点を構え、年間数百万台の自動車を製造しています。タイ政府は、自動車産業を支援するためのインセンティブや政策を打ち出し、電気自動車(EV)やハイブリッド車の生産を促進しています。

特に、EVの普及に向けた政策が注目されています。タイは、2030年までに国内販売される新車の30%をEVにすることを目指しています。この目標を達成するため、充電インフラの整備や税制優遇措置が導入されています。

2. インドネシア:潜在力を秘めた巨大市場

インドネシアは、東南アジア最大の人口を誇り、経済成長が著しい国です。自動車市場も急速に拡大しており、特に小型車やSUVの需要が高まっています。政府は、国内の自動車産業を強化するため、製造業への投資を奨励し、輸入関税の引き下げや税制優遇措置を導入しています。

また、インドネシアは国内市場向けのEV生産にも力を入れています。2022年には、現地生産された初のEVが市場に投入されました。政府は、2025年までに国内販売される新車の20%をEVにする目標を掲げ、EVの普及を促進しています。

3. ベトナム:新興プレイヤーの台頭

ベトナムは、ここ数年で自動車産業が急成長している国の一つです。ビンファスト(VinFast)という地元企業が、電気自動車の製造を手掛け、国内外で注目を集めています。ベトナム政府は、EVの普及に向けた政策を打ち出し、製造業への投資を奨励しています。

ビンファストは、国内市場だけでなく、海外市場にも積極的に展開しており、米国や欧州への輸出を視野に入れています。このような動きは、ベトナムが自動車産業において重要なプレイヤーとして台頭する可能性を示しています。

4. マレーシア:技術革新と輸出拡大

マレーシアは、自動車産業における技術革新と輸出拡大を目指しています。プロトン(Proton)やペロドゥア(Perodua)といった地元メーカーが国内市場を牽引し、技術開発に力を入れています。特に、プロトンは中国の吉利(Geely)との提携により、技術力と製品ラインナップを強化しています。

マレーシア政府は、自動車産業の競争力を高めるため、研究開発への投資を奨励し、EVやハイブリッド車の開発を支援しています。また、アセアン自由貿易地域(AFTA)の枠組みを活用し、域内外への輸出を促進しています。

5. フィリピン:成長する需要と課題

フィリピンもまた、経済成長に伴い、自動車市場が拡大しています。特に、経済成長が続く中間層の増加により、自動車の需要が高まっています。しかし、輸送インフラの整備や交通渋滞といった課題も抱えています。

政府は、自動車産業の発展を支援するため、インフラ整備と政策支援を進めています。また、EVの普及に向けた取り組みも始まっており、将来的にはEV市場の成長が期待されています。

まとめ

東南アジアの自動車業界は、各国の経済成長とともに急速に発展しています。タイ、インドネシア、ベトナム、マレーシア、フィリピンといった主要国は、それぞれの強みを生かし、自動車産業の成長を支えています。特にEVの普及が重要なトレンドとなっており、各国政府の支援政策やインフラ整備が進んでいます。これからも東南アジアの自動車業界の動向に注目し、ビジネスチャンスを探ることが重要です。

この記事を書いた人

金子 浩二

金子 浩二

海外販路開拓・業務改善コンサルタント
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15年間の海外ビジネス経験のなかで、海外駐在を2度経験。最前線で営業マンとして活躍し海外市場を切り拓いた結果、計100社以上の海外企業へ販売を実現。
また計4社で11箇所の部署を経験、業務効率化に尽力。異動引継が多い環境であったため、如何に組織のなかで人材を機能させるかに着目した結果、仕組み化の重要性に気づく。
これらの経験から2023年3月に独立し、GC COMMUNICASTIONSを開業。現在、企業様への海外販路開拓および業務改善という2つの切り口からコンサルティング支援中。

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