vol.51 越境販売とは

みなさんは『越境販売』という言葉をご存知ですか?今まさに、悩まされているところですか?
自社のブランドが強くなり、展開する国も多く慣ればなるほど、訳のわからないルートから
自社製品が売られている、なんていうことを聞こえてくるようになります。

なぜなら、あなたの製品ブランドが強くなれば、それだけ各国でディストリビューターになりたいという現地企業も多くなるのです。そしてディストリビューターになれなかった企業は、なんとかしてあなたの製品を取り扱いたいと考えるのです。

私は、営業としてタイの販売会社へ赴任し、タイを拠点に自動車関連部品を東南アジア各国へ販売しておりました。各国にディストリビューターを設けておりましたが、越境販売との出会いはその時になります。

この記事では、BtoBにおける越境販売の実態を、私の経験も踏まえてお伝えします。そしてこの記事を読むと、対策方法に関しても理解が深まります。結論としては、『見積時の価格』と『契約上の商圏』による対策が有効と言えるでしょう。

越境販売とは

越境販売とは、ある国や地域のディストリビューターもしくはリテーラーが、他の国や地域のディストリビューターもしくはリテーラーに向けて、商品やサービスを販売することを指します。例えば、あなたの会社が東南アジア各国に、ディストリビューター制を設けていたとします。

各国のディストリビューター数は、1社のみに独占販売権を与えていることもあれば、その国の地域別で商圏を複数社に分けて、ディストリビューターに販売することもあります。

あなたは各国の正規ディストリビューターに製品を販売し、そのディストリビューターが現地リテーラーへと販売、最終的に小売業者から消費者の元へ製品を届けられます。

しかしながら、越境販売の場合、Aという国から隣国のBという国へとあなたの製品が販売されるということが起こります。特に製品ブランドが強くなればなるほど、このようなことが国またぎの横流しが起こりやすくなります。

越境販売における実害

実際に私自身もこの越境販売の現場に出会したことがありますので、その経験を共有したいと思います。
当時、インドネシアとベトナム市場の営業を担当しておりました。

ベトナムのC社とはこれからディストリビューターに任命して、取引を開始しようとしたところで、
こちらからプライスリストを提示した時が、ことの発端です。

そのC社は、D社というインドネシアにある企業から、製品を購入していたという事実が発覚したのです。
しかも、かなりお値打ちな価格で横流しされており、私が提示した価格の方が高いという事象が発生しました。

このD社こそ、我々のインドネシアにおける正規ディストリビューターであったのです。その販売価格の証拠として、インドネシアからベトナムへ輸送された際の船積書類も確認しました。

ちなみにこのインドネシアのディストリビューターに関しては、商圏に関しての口約束はしていたものの、ディストリビューター契約の書面上には、明示されていなかったと記憶しております。結果、ベトナム市場におけるプライスコントロールの統制が効かなくなり、ビジネスがやりにくくなってしまいました。

対策1(見積時の価格)

今後、海外販売が順調に拡大していった時に、覚えておいてほしい点をお伝えします。
それは海外、特に陸続きの位置関係にある国々へ販売する時の対策です。

例えば、ミャンマーとタイ、カンボジアとベトナムなど、陸路で移動や物の輸送が簡単に出来てしまいます。すでに御社がタイでディストリビューターを設けて商売を展開しているとします。新たにミャンマーで商品展開をするため、ミャンマーのディストリビューターと取引開始します。

通常、ミャンマーの方が経済発展がタイに比べると遅れているため、市場相場を鑑みると、タイと比べて価格を抑えて販売することも考えられるでしょう。しかし、同じ業界で国を跨いで業者同士がつながっているケースもあり、お互い情報交換しております。

この場合、ミャンマー向けの価格がかなりの差で安ければ、ミャンマーからタイに越境販売することもあり得るでしょう。そこで、見積時には必ず周辺諸国へオファーしている価格もチェックするようにしてください。
値差の上限は輸送や関税のことを加味して、ある一定の%以内に保つようにすると良いでしょう。
ちなみに私たちは10%を上限として、近隣諸国への値差がおさまるように気をつけておりました。

対策2(契約上の商圏)

気休め程度かもしれませんが、ディストリビューターとの取引を行う際は、必ず契約書に商圏(販売しても良い場所・エリア)を明記するようにしましょう。正直、海外のディストリビューターが契約書どおりに、きちんとルールを守るというのは期待できません。なぜなら、言い逃れはいくらでもできるからです。

例えば、ディストリビューターが他国へ横流しをしていたとしても、「同国で販売したリテーラーが横流しした」と言い張られれば、それ以上深追いするのが難しいためです。ただし、このような越境販売による甚大なる被害が発生した場合において、損害賠償を求める場合、契約書の締結が大きな役割を果たします。

ディストリビューターと契約締結する際、越境販売による損害賠償の裁判事例ストーリーとして、活用する方が
相手への抑止力として有効ですね。

まとめ

ということで、本日は越境販売の実例と対策についてお話ししました。

越境販売は、ある国や地域で正規販売代理店が許可を得ずに商品を他の国や地域に輸出し、市場に供給することです。例えば、製造元や正規販売代理店の許可を得ずに商品を輸出入し、市場に供給することが挙げられます。このような行為により、市場の秩序が乱れる可能性があります。特に、価格競争や品質管理の問題が生じ、ブランドやメーカーにとって悪影響を及ぼすことがあります。

越境販売に対する対策としては、以下の点が考えられます:

  1. 価格設定の注意: 販売価格を提示する際には、周辺諸国の価格や市場動向を十分に考慮することが重要です。特に陸続きの地域では、価格差による越境販売が発生しやすいため、価格設定に慎重に取り組む必要があります。
  2. 契約書の商圏の明確化: ディストリビューターとの契約書には、商圏(販売を許可する地域)を明確に記載することが重要です。これにより、越境販売を防止し、契約違反時の対処法を明確にすることができます。

以上の対策を講じることで、ブランドやメーカーは越境販売によるリスクを最小限に抑えることができます。ただし、完全に防ぐことは難しいため、定期的な市場監視や契約の遵守を徹底することが重要です。

この記事を書いた人

金子 浩二

金子 浩二

海外販路開拓・業務改善コンサルタント
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15年間の海外ビジネス経験のなかで、海外駐在を2度経験。最前線で営業マンとして活躍し海外市場を切り拓いた結果、計100社以上の海外企業へ販売を実現。
また計4社で11箇所の部署を経験、業務効率化に尽力。異動引継が多い環境であったため、如何に組織のなかで人材を機能させるかに着目した結果、仕組み化の重要性に気づく。
これらの経験から2023年3月に独立し、GC COMMUNICASTIONSを開業。現在、企業様への海外販路開拓および業務改善という2つの切り口からコンサルティング支援中。

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