各国で自社製品を輸入販売し、現地での流通を担うパートナーを見つけることはできても、そのパートナーが本当に信頼できるか、不安になりますよね。
私自身も海外で約150社ほどの企業と関わってきましたが、さまざまな人物に出会いました。その中には、トラブルに発展したケースもありました。
その代表例が、注文を受け取ったものの、支払いが滞るケースです。船積の段取りをし、保税倉庫に商品を搬入していたら大変です。通常、保管期間は数日間ですが、入金がないまま船積みできずに保管が長引けば、倉庫保管料がどんどん膨れ上がります。このような経験をされた方もいらっしゃるかもしれません。
今回は、取引リスクを事前に回避するための選定基準の事例をいくつかご紹介します。これらの基準は、私が自動車部品業界での経験から導き出したもので、業界固有の事柄も含まれていますが、他の業界の方にも参考になる部分があるかもしれません。
稼働状況を確認
海外の自動車部品を扱うディストリビューターにとって、1日のビジネスルーティンは非常に重要です。
通常、午前中は小売業者からの注文を集約し、夕方に倉庫から在庫を取り出して出荷準備を行います。
このため、夕方に訪問することで、その会社の稼働状況を把握することができます。従業員が暇そうにしていたり、注文の量が少ない場合は、「この会社はあまり注文がないのかもしれない」「利益が少ないのかもしれない」ということを推測することができます。
同様に、倉庫内の在庫もチェックします。在庫が多く、ほこりがかぶっている場合、「この会社の在庫はあまり回転していないのかもしれない」と判断することができます。
取扱商品を確認
模倣品はどの業界でも問題となりますし、自動車部品業界も例外ではありません。「本物しか取り扱っていません」と謳いながら、実際には模倣品を扱っている業者も存在します。自社の製品のコピー商品を扱われると、信頼性に影響が出る可能性があります。
このような場合、業者に対して「倉庫を見せてもらえますか?」と問いかけることが重要です。本物品しか扱っていない業者は、ためらうことなく「どうぞ!」と言って倉庫を見せてくれます。ただし、ずる賢い業者は事前に準備をして、見せるべきでない場所にアクセスできないようにするかもしれません。
業者が見せるべきでない物がある場合、さまざまな理由で隠したり、倉庫の一部しか見せなかったりする可能性があります。そのような行動がある場合、後ろめたさを感じることがあります。そのため、業者の対応もチェックポイントの一つとして意識することが重要です。
財務諸表を確認
企業の財務状況を確認することは非常に重要です。特に、過去3年分の売上高や営業利益、売掛金や棚卸商品の推移をチェックすることは、企業の成長性や安全性を評価する上で不可欠です。支払いが滞るリスクを事前に把握することができるかもしれません。
財務諸表の入手方法については、日本の取引先銀行や信用調査会社に相談すると良いでしょう。彼らは入手可能かどうかをすぐに教えてくれます。ただし、財務諸表の読み方については、多くの人が理解していないかもしれません。
そのような場合、自社内の財務・経理部や顧問税理士に相談することが有益です。彼らは財務諸表の読み方や解釈についてアドバイスを提供してくれるでしょう。彼らのサポートを受けることで、より正確な判断が可能となります。
社長の人柄
結局のところ、会社は社長の人柄や性格によって組織自体もそのようになっていくと考えています。つまり、『社長は会社の鏡』と言えるでしょう。
社長が横暴であれば、『類は友を呼ぶ』という言葉の通り、似たような従業員が集まりやすいですし、従業員も社長のカラーに染まりがちです。
結局、ビジネスは人とのつながりによって生まれていくものですので、取引する社長の言葉や態度などで感じるものから信頼の物差しとして、自分自身の目を養っていく必要があると考えます。
現地・現物・現実主義
「これは私が昔働いていた商社で学んだ教訓ですが、『現地・現物・現実』が重要だということです。
自分の目で見て、耳で聞き、肌で感じることが、現地(海外)に行くことで理解できるものがあります。
現代では、ウェブを通じた商談が一般的であり、その利便性や効率性は素晴らしいものですが、やはり飛行機に乗って現地に赴き、相手の顔や声を直接見聞きすることは、人間同士の理解を深める上で不可欠なことです。」
まとめ
海外の自動車部品ディストリビューターの日常業務や信頼性確保の手段を学びました。
訪問時の会社の稼働状況や倉庫の在庫チェックは、取引相手の状況を把握するための重要な手段です。
模倣品の取り扱いが疑われた場合、倉庫見学を依頼することが有効です。信頼性を確認するための一つの手段となります。
財務諸表の確認や解釈には専門知識が必要であり、取得方法については専門家や銀行に相談することが重要です。
会社の性格や文化は社長の人柄によって形成されるという考え方も興味深いです。取引先の社長の姿勢や態度は、ビジネスの信頼性を判断する上で重要です。
ビジネスにおいては、ウェブでの商談も有効ですが、現地での経験が不可欠であることを再認識しました。
相手との理解を深めるには、現地訪問が重要な要素です。