vol.15 中小企業の海外市場調査3つの切り口

初めて海外で自社製品を販売する際、市場調査は不可欠です。大手企業ではマーケティング部が専門的な分析を行いますが、中小企業では営業チームがその役割を果たすことが一般的です。

このような中小企業向けに、自らでも実践可能な市場調査方法を紹介します。日本から海外市場を深く知るのは難しいですが、デスクトップリサーチやヒアリングを通じて一定の情報を得ることができます。

重要な要素は、需要の規模、顧客のニーズ、競合他社の動向、そして適切な販売パートナーです。これらを事前に把握し、現地での体験を通じてさらに情報を収集しましょう。

基礎データ

海外市場を探る際に役立つ基礎データには、人口数、平均年齢、国民1人あたりのGDPなどがあります。さらに、国の事情や国民性のデータも重要です。例えば、親日かどうか、政治的な安定性、法律の変化などが挙げられます。これらは今後の取引に影響を与える可能性があります。

また、人口やGDPは経済力や成長性を示す重要な指標です。1人あたりのGDPに基づいて、市場の消費文化や価格帯を理解することができます。

例えば、1人あたりのGDPが1千USドル以下であれば、都市化が始まり、高速道路やバイクなどの需要が高まる傾向があります。一方、1万USドルを超えると、消費文化が成熟し、多様化します。

これらのデータを踏まえて、適切な市場戦略を構築し、海外市場でのビジネス展開を考えることが重要です。

市場定量データ

ビジネス業界の量的なデータを入手するためには、市場調査や業界レポートを活用する必要があります。例えば、建築資材メーカーの場合、市場の母数となるデータは年間の住宅着工件数です。このデータを元に、
以下のような分析が行われます。

  1. 年間住宅着工件数の把握: 市場(国)において年間で着工される住宅の数を把握します。
  2. 製品採用率の評価: 着工される住宅の中で、自社の製品が採用される割合を評価します。
  3. 富裕層向け住宅の割合の特定: 富裕層向けに建てられる住宅の中で、自社製品が採用される割合を評価します。
  4. 競合との比較とマーケットシェアの見積もり: 競合他社がどれだけのシェアを持っており、自社がその中でどの程度のシェアを獲得できるかを見積もります。

これらの分析を行うことで、製品の販売ポテンシャルの数量を推定することが可能となります。
このようなデータに基づいて戦略を立て、市場における競争力を高めることが重要です。

市場定性データ

市場の質的なデータを入手することは、トレンドや顧客のニーズを把握し、商品の設計や展開に活かす上で重要です。例えば、住宅の場合、和モダンやヨーロッパ風の造りなどのトレンドが存在します。これらのトレンドを把握し、製品展開に反映させることで、需要を取り込むことが可能です。市場のトレンドに合致した商品設計や販売戦略を立てることが重要です。

また、建物の仕様における機能のトレンドも重要です。例えば、作業効率の向上やコスト削減などの機能的なトレンドがあります。これらのトレンドを把握し、製品に反映させることで、顧客にとって魅力的な商品を提供することができます。

市場の質的なデータを収集し、商品設計や展開に活かすことで、競争力のある製品を生み出すことができます。
トレンドや顧客のニーズを把握し、柔軟に対応することが成功の鍵となります。

まとめ

市場調査の重要性は言うまでもありませんが、時間をかけすぎることなく、効果的なアプローチが必要です。私の考えでは、ある程度の情報を元に現地に足を運び、実際の現場を確認することが重要です。

このアプローチは、PDCAサイクルの一環として捉えることができます。まず、計画(Plan)を立て、その計画を元に現地に行き、現実を確認(Do)します。そして、得られた結果を分析し(Check)、販売戦略や商品設計を改善していきます。最後に、改善された戦略や商品を販売パートナーに訴求(Action)していきます。

このようなPDCAサイクルを繰り返すことで、効率的に海外市場調査を進めることができます。特に中小企業にとっては、迅速な対応が求められるため、早めの行動が重要です。

この記事を書いた人

金子 浩二

金子 浩二

海外販路開拓・業務改善コンサルタント
事業推進するための人材やノウハウ・スキルにお困りではございませんか?
15年間の海外ビジネス経験のなかで、海外駐在を2度経験。最前線で営業マンとして活躍し海外市場を切り拓いた結果、計100社以上の海外企業へ販売を実現。
また計4社で11箇所の部署を経験、業務効率化に尽力。異動引継が多い環境であったため、如何に組織のなかで人材を機能させるかに着目した結果、仕組み化の重要性に気づく。
これらの経験から2023年3月に独立し、GC COMMUNICASTIONSを開業。現在、企業様への海外販路開拓および業務改善という2つの切り口からコンサルティング支援中。

屋号:GC COMMUNICATIONS
住所:愛知県名古屋市中区金山1丁目14-16 トキワビル5階Voltage名古屋
電話:080-4159-8174