vol.76 東南アジアへの拠点進出

はじめに

東南アジアは近年、経済成長が著しい地域として注目を集めています。この地域には、急速に成長する消費市場、多様なビジネス機会、そして戦略的な地理的位置があります。そのため、多くの企業が東南アジアに拠点を設けることを検討しています。本記事では、これまでの私の2度のタイ駐在経験より東南アジアへの拠点進出のメリットやギャップ・課題について解説します。

東南アジアの魅力

東南アジアは、ASEAN(東南アジア諸国連合)加盟国を中心に構成される地域であり、人口は約6億6千万人に上ります。この地域は、多様な文化と豊かな自然に恵まれており、観光地としても人気があります。しかし、それだけでなく、経済的な魅力も非常に大きいです。

1. 経済成長

東南アジアの多くの国々は、年々高い経済成長率を維持しています。例えば、ベトナムやフィリピンは近年、年率6%以上の経済成長を遂げており、タイやインドネシアも安定した成長を見せています。この成長は、若くて活力ある労働力、大規模なインフラ投資、そして消費市場の拡大によって支えられています。

2. 人口構造

東南アジアの人口は若く、労働力として非常に魅力的です。多くの国では平均年齢が30歳以下であり、労働市場に参入する若者が増加しています。この若年層は、消費者としても重要なターゲットとなります。

3. 地理的な利便性

東南アジアは、アジアの中心に位置しており、世界の主要市場へのアクセスが容易です。特にシンガポールやマレーシアは、優れた交通インフラと物流網を持ち、国際的なハブとして機能しています。

拠点進出のメリット

1. コスト競争力

東南アジアの多くの国々では、労働コストや製造コストが先進国と比較して低く抑えられます。これにより、製品のコスト競争力を高めることができます。例えば、ベトナムやカンボジアでは、労働コストが比較的低く、製造業の拠点として魅力的です。

2. 成長市場へのアクセス

東南アジアの消費市場は拡大しており、中間層の増加が顕著です。この市場に直接アクセスすることで、企業は新たなビジネスチャンスを獲得することができます。特に、インドネシアやフィリピン、ベトナムは人口が多く、今後消費市場としてのポテンシャルが大きくなるだろうと予測できます。

3. 投資環境の整備

多くの東南アジア諸国は、外国企業の投資を促進するための政策を導入しています。税制優遇措置や投資インセンティブが整備されており、進出を後押ししています。例えば、シンガポールは外国企業に対する税制優遇措置や高度なビジネスインフラを提供しており、投資先として非常に魅力的です。

拠点進出時のギャップ

1. 文化とビジネス慣習の違い

東南アジアの各国は、それぞれ異なる文化やビジネス慣習を持っています。これらを理解し、適応することが進出の成功に不可欠です。日本においても昔と比較すれば残業はかなり減ってきたと思いますが、例えばタイの従業員では基本的に残業という概念自体ありません。したがって定時になれば例え仕事が残っていたとしてもスタスタと帰宅しますが、それが普通のことであることは理解しておいた方が良いでしょう。

そして日本のように帰宅する前に「お疲れ様です」なんていう挨拶もなく、従業員が横を過ぎ去っていく光景が駐在当初散見され、カルチャーショックを感じました。普通なんか言って帰るだろう、と。こちらに関してはコミュニケーションの一環として挨拶の大切さをタイ従業員の皆さんに訴えました。

2. 働きに関する男女の差

東南アジアでは女性の方がよく働き、男性の方があまり働かないとよく言われます。これはタイのみではなく、ベトナムやインドネシアも同じことを聞きます。原因はよく分かりませんが、言われてみればよくセブンイレブンなどのコンビニの入り口付近にお腹を出して座っているおじさんとその横に犬、みたいな光景は今でも目に浮かびます。暑い気候に因果関係があるのでしょうか。

一方、初めて駐在した時に私が驚いたのはマネージャークラスの大半が女性であったということです。
日本では各課の島となったデスクの塊に睨みをきかすマネージャーの役目は男性のイメージがいまだに多いですよね。それが、タイではほとんどが女性だったんです。実際に一度味方になってくれれば女性はとても頼りがいがあるので、人間関係をうまく構築していってください。

3. 現地スタッフ昇進の悩み

タイに赴任していた頃の話ですが、とある課のマネージャーであるタイ人男性と話をしていたことをお話しします。タイ人にとって日本企業で働くメリットとしては”とても教育を熱心にしてくれる”や”福利厚生が充実している”といった声が多く聞こえてきます。その一方、昇進をしたいという熱意を持った従業員にとってはなかなか難しいようです。というのも結局日本企業の現地法人社長は日本人であるから。

日本人は日本から駐在しにきて、一定の年数が経てばまた代わりに日本人駐在員がやってくる。したがって、マネージャーになってもそれ以上の昇進が見込めないわけです。大企業になればなるほど、高役職者は全て日本人で固めていたりするわけですから。一方で日本人サイドの話を聞くと、現地で信頼をおいて会社の社長というポジションを任せられる人材が現地にはいない、という話も聞こえてきます。

実際にいろんな現地の方とお仕事を一緒にして分かったのですが、優秀な方はいっぱいおりますし、日本側が昔の感覚そのままに先入観を持って決めつけているということもあるかもしれません。しかしながらこれからの課題としては現地法人の代表を現地の方から選出する時代というのが、海外ビジネスを飛躍する一歩かもしれません。

まとめ

東南アジアへの拠点進出は、多くのビジネスチャンスを提供しますが、同時に文化的な違い、働き方、そして現地従業員の昇進への対応など、多くの課題も伴います。成功するためには、事前のリサーチと準備、そして現地の文化やビジネス慣習への理解が欠かせませんし、結局のところ大変な労力が必要ですが、一つずつ丁寧にコミュニケーションを図ることです。これらを踏まえて戦略的に進出することで、東南アジア市場での成功を手にすることができるでしょう。

この記事を書いた人

金子 浩二

金子 浩二

海外販路開拓・業務改善コンサルタント
事業推進するための人材やノウハウ・スキルにお困りではございませんか?
15年間の海外ビジネス経験のなかで、海外駐在を2度経験。最前線で営業マンとして活躍し海外市場を切り拓いた結果、計100社以上の海外企業へ販売を実現。
また計4社で11箇所の部署を経験、業務効率化に尽力。異動引継が多い環境であったため、如何に組織のなかで人材を機能させるかに着目した結果、仕組み化の重要性に気づく。
これらの経験から2023年3月に独立し、GC COMMUNICASTIONSを開業。現在、企業様への海外販路開拓および業務改善という2つの切り口からコンサルティング支援中。

屋号:GC COMMUNICATIONS
住所:愛知県名古屋市中区金山1丁目14-16 トキワビル5階Voltage名古屋
電話:080-4159-8174